その日のうちに帰る予定だったのだけれど、それを伝えた途端、気に入らなそうな顔になった伊月に、そのまま部屋に拉致されることになった。

いい返事をしたっていうのに、言っていたとおりの監禁だ。

『ふじえに好きに生きろって言われたんだろ? 一日だけなんて小さいこと言ってないで、一ヵ月や二ヵ月サボるくらいの大きなことしてみろよ』

おばあちゃんが言ったのはそういう意味じゃないと思う。
でも、まだ一緒にいたいと思ってくれているのはわかったから、素直に従うことにした。

部長には今朝の時点でもしかしたら明日もダメかもとは伝えてある。一応、明日の朝もう一度連絡を入れよう……と考えながら、改めて伊月の部屋を見渡す。

仕事が残っているという伊月は『十八時には帰れるから、それまで絶対に出るなよ』と言い、私をこの部屋に閉じ込めたのだけれど……その部屋が、さすが御曹司と言わざるをえないような豪華仕様で、その程度はため息が出るほどだった。

だだっ広いワンルームは、三十畳以上は確実にあるのがわかる。壁紙は白くフローリングの床はアッシュというシンプルな色合いだけれど、とても洗練して見えた。きっと物が少ないせいもあるのだろう。

南側には大きな窓が並び、太陽が出ている時間は電気の出番はまずなさそうだ。
窓には天井から下がるタイプのバーチカルブラインドが取り付けられていて、部屋には細長い影ができている。