「そんな覚悟決めた顔で会いに来られて、待てるわけがないだろ」

真っ直ぐな目で告げられ、なんでだか息が詰まり涙が浮かびそうになった。
そんな切羽詰まった顔で見つめられたら、〝場所を移したい〟なんて言えない。

トクトクと鳴る胸を感じながら、意を決して「おばあちゃんが」と話を切りだした。

「私には好きなように突っ走って欲しいって。それに、大地も私が幸せになってくれないと安心できないって言ってて……それに私も、伊月がいいと思ったから会いにきた」

じっと見上げる先、伊月の瞳が私を映していた。
こんな風になにかを欲しいと願うのも、言葉にするのも初めてで、怖かった。

私の頭の中にはどうしても、手を振り払われたときの光景がチラつくし、また同じことになるんじゃないかと思うと、怖くて仕方ない。

それでも……私は、伊月を諦めたくない。この手を離したくない。

「他のなによりも、伊月が欲しいと思った。だから、諦めるんじゃなくて手を伸ばして取りに行こうと思って戻ってきた」

声に出してみて、初めて気づく。

私はずっとこんな風になにかを欲しがりたかったんだって、求めて受け止めてほしかったんだって……気づく。

その言持ちを閉じ込めてきたから、だから、ずっとどこかで苦しかったんだ。
満たされなかったんだ。

じわじわと涙が浮かぶ。それを我慢しながら続けた。