極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する



【体調が悪いので、お休みさせてください。明日も難しいかもしれません。連休明けですのに、ご迷惑をおかけして申し訳ありません】

岡島さんが作ってくれたグループにメッセージを送ると、すぐに既読数が増え、部長から【わかりました。ゆっくり休んでください】と返信がきた。

激しく良心が痛みながらも、ホームに入ってきた新幹線に乗り込む。

思い返してみれば、小学校から今までで学校や会社をずる休みしたのはこれが初めてだ。
体調が悪くても熱がなければマスクをして行っていたし、どちらかといえば無理をして怒られる方だった。

だから、こんなことをしている今、胸やら胃が痛くて仕方ない。
自分がどうしようもない人間に思え、自己嫌悪に押しつぶされる。

――だけど。
人生で初めて勇気を出そうと決めたときくらい、何にも縛られずに頑張りたい。

今回だけは本当にすみません!と心のなかで部署のメンバーに謝りながら、窓の外を流れる景色に目を向けた。

気持ちを大事にしたかったから、とくになにも考えずに新幹線に乗ってしまったけれど、どうしよう……と今更思う。

今は八時だから、駅につくのが十時頃。伊月は当然出社しているだろう。となると、家に帰って、夕飯時に顔を出すかもしれない伊月を待ったほうがいいだろうか。

でも……それだとまたどこか受け身だ。
頑張ろうと決めたなら、会社に迷惑をかけてまで今こうしているのなら、せめて行動だけはしたい。

そう思い、携帯ケースに挟んである伊月の名刺を取り出す。
そこに書かれているのは、会社の電話番号と、会社内で伊月が使っている携帯番号。

会社用の携帯なら、緊急時のために常に持ち歩いてはいるはずだ。