四股と聞いて、呆れると同時に笑いそうになった。
光川さんは本当に誰でもよかったんだなと思ったからだ。わがままを言わない、都合のいい女なら誰でもよかったんだろう。
三股が発覚した時点でわかっていたことだけど、再度実感し、急速に虚しさに襲われた。
思い返してみれば、私が今まで付き合ってきたひとはみんなそうだった。私じゃなくても、都合がよければ誰でもよかったひとばかりだ。
付き合っていたときにはまったく気づかなかったことが、思い出のあちこちにハッキリと見えてきて自嘲するように苦笑いをこぼした。
「あ、そうだ。三咲さん、メッセージアプリ入れてるよね? 部署のグループ作って、欠勤連絡だとか相談だとか、そこですませられるようにすることになったの。で、私がまとめることになったから、ID教えてもらってもいい? フルフルでもバーコードでもなんでもいいんだけど」
「はい」
デスクの脇に置いてある携帯を手に取り、アプリを開く。
岡島さんにバーコードを読み取ってもらい無事交換が済むと、岡島さんは「じゃあ、グループに登録させてもらうね」と言い、自席へと戻っていった。
その後ろ姿を眺めているうちに、携帯が音を立てグループへ招待される。さすが岡島さん。仕事が早い。
欠勤連絡がメッセージで済む……他の会社でもちらほら聞くようにはなっていたけれど、うちの会社もついにその波に乗るらしい。
アプリを閉じ、携帯を閉じようとしたところで、携帯ケースに挟んであった紙がヒラヒラと床に落ちた。
なにを挟んでいたんだっけな、と考えながらそれを拾い上げ……目を見開いた。
手の中にあるのは、伊月の名刺だった。



