思わず大きな声を出した私に「しー!」と人差し指を立てた岡島さんが続ける。
「三日前かな。光川さんが結婚式のスピーチ頼んでた部長に謝りにきたって噂になってさー……式場もキャンセル料金かかるらしいし、大変だよね。まぁ、自業自得でしかないんだけど」
「……光川さんと土田さんは、今は?」
「普通に働いてるよ。土田さんは、本命彼女にカミングアウトして吹っ切れたみたいで、いつも通り。光川さんはオーラがずっとどんよりしてるけど……でも、キャンセル料だってかかるし、もしかしたら本命彼女から破断の関係で慰謝料とか請求されてる可能性だってあるし、どんなに居づらくても仕事は辞められないでしょ」
「なるほど……」と考えながら、十日ほど前、私に会いに来た光川さんのことを思い出していた。
そうか。あのあと、そんなことになっていたのか。私もひっぱたいちゃったし、本当に自業自得とはいえ、踏んだり蹴ったりだったんだな、と考えていると岡島さんが教えてくれる。
「それにね、どうやら光川さん二股じゃなかったみたいなのよね。三股、四股してたらしいよ」
「……それ、本人が言ったんですか?」
「結婚がなくなって、さすがに可哀相だからって周りが飲みに誘ったんだけどね、その飲み会で酔っぱらってべらべら話したって。〝騙される方が悪いんだよ〟ってくだ巻いてたって話」



