二週間も会社を休むのは初めてだったから、月曜日は仕事がどうなっているかビクビクしながら出社したのだけれど、なにも変わりはなく、そこに拍子抜けすればいいのか安心すればいいのか少し悩んだ。
私がいなくても普通に仕事は回るんだな……ということにわずかな寂しさと違和感が残ったけれど、そんな思いを振り切るようにパソコンに向かっていると、後ろから話しかけられる。
「三咲さん、休みの間、どこか行ってたの?」
振り返ると、三年先輩の岡島さんが書類片手に立っていた。
胸まで伸びたストレートの黒髪は今日も毛先まで手入れが行き届いていてつやつやしている。
岡島さん曰く「男を釣るならまず髪!」らしい。私も、岡島さんを見るたびに、綺麗な髪だなぁと惚れ惚れしてしまうからあながち間違いではないと思う。
「実家に帰っていたので、特に観光地とかは行ってないです」
「そうなんだ。あ、休憩室にあったお土産あとでいただくね。あれ、好きなんだよね。一回、朝早くから並んで詰め放題にも参加したことあるくらい」
会社へのお土産として買ってきたのは、ご当地名物のお菓子だ。
造っている工場では朝早くから詰め放題をしていて、とても人気が高く待ち時間も相当だという話は聞いている。
「へぇ、そうなんですね。私、まだあれやったことないんです。いくつ詰められました?」
「十三個。平均が十二個だっていうから、絶対越してやろうと思って真剣になっちゃった」
「詰め放題とか、夢中になっちゃいますよね」と笑っていると、岡島さんが腰を折って顔を近づける。
「それよりさ、光川さん、あれから大変だったんだよ。〝呪ってやる〟って息巻いてた土田さんが本命彼女に全部話したらしくて、結婚の話なくなったんだって」
「えっ」



