トマトジュースが一リットル入ったペットボトルを二本手にしたときには、さすがに苦笑いがもれた。これと根菜たちで重さは五キロ近い。腕がちぎれそうになるはずだ。

荷物の整理は放っておくと平気で一ヵ月くらいそのままになってしまう自分の性格は知っているので、面倒くささをどうにか振り切り、片付けにかかる。

服をクローゼットに戻したり、充電器を取り出して元の場所に置いたりと忙しく動いている間、実家を出るときのことを考えていた。

『気を付けて帰れよ。なにかあったらすぐ連絡して。……で、次いつ帰ってくんの? 来月?』

大地はブスッとした顔でそう聞き、おばあちゃんはいつも通り笑顔で送り出してくれた。

『つぐみ。いつでも帰ってきていいんだからね』

念を押すように言ったのは、心配してくれている証拠だ。

そして伊月はというと。
どうしても仕事の都合がつかなくてこられなかった。

直前、実家の固定電話にかかってきた電話で『二時間くらい遅らせてくれれば、車で送れるから待ってろ』と言われたけれど、断った。

伊月は何度も『待ってろよ。いいな』と言っていて、その言葉を裏切るのは苦しかったけれど、私は予定通りの時刻に新幹線で戻った。

だって、会ったところでどうなるの?

また〝帰るな〟なんて言われたって、私は帰らないわけにはいかないし苦しくなるだけだ。
それに……私も好きだなんて昂った感情に任せて気持ちを伝えたところで、その先は?

あんな大企業の御曹司である伊月と付き合えたとして、いつか手を振り払われるに決まってる。

伊月の気持ちを信じていないわけではなく、伊月の意志関係なしに、家の事情が優先される。
伊月はそういう立場だ。