聞き終わる前に、力任せに押し倒される。押し付けられた先がベッドだったから痛みはなかったけれど、それなりの衝撃があり驚いた。

でも……そんなものよりも、目を開けてまず視界に映った伊月の表情に息を呑んだ。

両手で私の手をそれぞれ押さえつける伊月の顔が、あまりに真面目で、声を奪われる。それと同時に、心臓が激しく高鳴った。

顔の横でそれぞれベッドに縫い付けられた手はびくともしなかったけれど、怖さは感じない。
ただ……異常なくらいにドキドキしてしまっていた。

「伊、月……なに? ふざけないで」
「ふざけてねーよ。本気」

やっとの思いで出した声はすぐに否定され、またしても黙り込む。
閉じた口のなかで歯がかすかにカチカチと音を立てるのは……緊張からなのか、膨らんだ期待からなのか。

真っ直ぐな伊月の瞳に囚われ、溢れた想いが涙を浮かべさせる。

「本気で口説いてる」
「……やめて」

これ以上聞いたら、きっと想いが暴走する。
だから震える声で言ったのに、伊月は尚も真剣な眼差しで続けた。

押さえつけられた手が、熱い。

「おまえが家族を大事にしてるのは知ってる。だから、俺がまとめて守ってやる。ふじえも大地も……おまえも。全部俺が大事にする」

呼吸が震える。
いつの間にか溢れた涙が、目尻から落ちたのがその熱さでわかった。