極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する



「同じ会社なんだろ? いくら部署が違ってても、恋人の有無の話くらい入ってくるもんじゃねーの?」

伊月の疑問はもっともで、言葉に詰まりながら答える。

「だって、社員二百人くらいいるし」
「二百人か。そこそこでかい会社だな。文房具メーカーだっけ?」
「下請けだけどね。とにかく、彼の噂なんて恋愛含め聞いたことなんてなかったんだよ。それに社内恋愛なんて周りにバレたら仕事がしづらくなるし、普通内緒にするでしょ?」

言いながら思い出す。
私もその意見には賛成だったものの、周りに内緒にしようと言いだしたのは光川さんのほうだったと。

その時にはなんの引っ掛かりもなかったハズなのに、今、こうしておばあちゃんや伊月相手に説明していると、胸がざわっと嫌な波を立てた。

たぶん……光川さんにはあの頃から私以外にも恋人と呼べる人がいたんだろう、という考えが浮かび上がる。
同棲している彼女とは結婚するくらいなんだから長年の付き合いなんだろう。土井さんとだって、付き合いが長そうだった。

「まぁ、向こうから告白してきたなら最初から浮気疑うなんてしないかもしれないけど、付き合ってる中で気づくだろ。普通」

痛いところをさされ、「だって」と伊月を見た。

「火曜日と土曜日は必ず会ってたし、旅行だって行ってたんだよ。そこそこの頻度で会ってたしまさか三股なんて疑わないじゃない」

「まぁねぇ」と頬に片手を当て難しい顔をするおばあちゃんを見て続ける。