極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する



何ヶ月かはバイトをがんがん入れて、その間に新しい仕事を探するのありかな、と思う。

――でも。

『一度くらい思い切り立ち止まったっていいし、好きなもののために突っ走ったっていいのよ。おばあちゃんはつぐみにそういう生き方をしてほしいの』

突っ走るっていったって……どこに、誰に向かって?

不自由に暮らしてきたつもりはない。高校卒業してすぐに就職の道を選んだのだって自分の意志だ。誰かに強制されたわけではない。

十分すぎるくらい愛情を受けて育てられたし、実際幸せを感じながら過ごしてきた。

それでも、急に自由を与えられると戸惑うだけで走り出すどころか一歩も踏み出せない自分に気付く。

選択肢を与えられた途端、自分の希望の先がわからなくなる。
文字通り、目の前が真っ白になったようだった。

私の行きたいところは?
見たいものは?

欲しいものは――?

それを考えたとき、チラッと伊月の顔が浮かび自分でも驚いていたとき、誰かにぶつかられよろける。

「あ、すみません」
「あ……いえ。こちらこそ」

お互い足は止めずに軽く謝罪だけして……いつの間にか、目の前に伊月グループの会社があることに気が付いた。考え事をしている間にずいぶん歩いてきたらしい。

駅前の広場に立ったまま見上げて、思わずため息が出た。