おばあちゃんが、大量の小豆を取り出したのはそれから二日後だった。
洗ったり煮たりを繰り返し、丁寧にアクをとったあと、ザラメを入れまた煮る。そのまま水分を飛ばしてから水あめと塩を入れ、味をなじませるため一時間ほど寝かせ、完成。
朝七時前からの作業は三時間にも及んでいて、もう感心するほかない。
あんこなら、スーパーでも安く売っているけれど、小さい頃から慣れているせいか、おばあちゃんの手作りあんこよりおいしいものには出逢ったことがない。
手間を考えれば、それも当たり前に思えた。
「おいしいってわかってても、ひとりでは作ろうって思えないんだよね」
「働いてるんだから当たり前でしょう。私だって、気乗りしない日は絶対嫌だもの。こんな作業」
なんて言いながらも、出来上がり間近のあんこをかき混ぜるおばあちゃんの横顔からは鼻歌が聞こえてきそうだ。
今日は気乗りしているってことかな、と思いながら手元を覗いていると、不意に聞かれる。
「それで、つぐみ。少しは気持ちは落ち着いたの?」
光川さんとのことを聞かれているんだとすぐにわかって、少し驚く。
おばあちゃんがこの話題を持ち出したのは、ここに来てから初めてだった。
10時半前の太陽はもう高くまで昇り、溢れんばかりの光を縁側から家のなかへと注いでいた。
「うん。もう大丈夫。ごめんね、なんか」
きなこを砂糖と混ぜながら答える。
笑顔を作ったつもりだったのに、おばあちゃんはなぜか呆れたような笑みをこぼした。
「なに?」
「つぐみは昔からそう。いつも周りに気を遣わせないようにってそればっかり。私や大地と一緒だからそうなのかと思ってひとり暮らしを勧めたのに、結局そのくせは直らないままねぇ」
「そんなことないよ。結構好き勝手言うし……あ、ほら、このあいだの大家だっていう男とだって揉みあいになるくらいのケンカしたくらいだし」



