極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する


「家族のことは、適当なところで切り捨ててくれていいんだよ。大地はもっと、自分だけを大事にしてもいいと思うし……血が繋がってるんだもん。どうやったって切れないから大丈夫」

うまく言えないけれど、家にひとりだけの男だからとか、そういうことを必要以上に背負ってほしくない。

それは事実だし、そういう部分で大地を頼りにしているところはもちろんある。
でも、それ以前に大地はまだ高校生だ。もっと、家族以上に優先させるものがあっていい。自分勝手にしてくれていい。

家族に心配されるくらいの無茶をしたっていい年齢だ。

テレビのなかからたまに聞こえる、ドッとした大人数の笑い声。玄関先で聞こえる、インターホンを取りつける音。中庭の木が風に揺れる葉音。

汗をかいたコップを指先で触っていると、大地はしばらく黙ったあとで口を開く。

「俺は、家族が大事なだけだ」

真面目な横顔に、ふっと笑みを浮かべてからひとつ息をつく。

「私も同じだよ。……だから、これ以上変な男に引っかからないように気を付けます。大地が私の心配ばかりして彼女も作れないんじゃ申し訳ないしね」

「まぁ、でも、たとえ家族以上に大事なヤツができたところで、姉ちゃんに男ができたなんて聞いたらどうせ心配するけどな。ろくな男じゃないに決まってるから」

馬鹿にしたように笑われ、眉を寄せる。

「決まってない」
「決まってる」
「決まってるわけないでしょ!」
「絶対決まってる。そもそも姉ちゃんチョロすぎるんだよ。男は下心があったら優しくするもんなのに、それをすぐ勘違いするから――」

そこから始まった姉弟喧嘩の後ろで、業者さんがインターホンをとりつける工事音が響いていた。