男に殴られそうになったとき、駆けつけてくれた伊月の顔を見たら、もう大丈夫だと思って気が抜けた。
きっと、駆けつけたのが大地だったら、私は安心するよりも心配が先だってしまっていたと思う。
私が守らなきゃって。
でも伊月のことは……そうは思わなかった。完全に頼ってしまっていた。
そんな自分に気付き、静かに刻みだした音に戸惑っていると。
「……なぁ」
伊月が神妙な声で話しかけてくる。
「なに?」
「おまえ、結構胸でかいんだな。さすがになんか……意識する」
途端、反射的に突き飛ばした私に、伊月はなにやら文句を言ってはいたけれど。
そのあと、洗面所までついていてドライヤーをかけたり、男との一件をおばあちゃんや大地に説明してくれたりと最後まで色々世話を焼いてくれた。
伊月は見かけに反して面倒見がいい。そして……とても優しい。
その事実をしっかりと実感してしまったせいで、胸の奥がトクトクとうるさかった。



