極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する



結局、伊月の通報により警察が来て、男に厳重注意をしてくれた。一応、不退去罪という法律が適用されるらしいけれど、連行とまではいかないって話だった。

「力任せにこいつのこと押さえつけたんですよ。男の力で女のこいつを怖がらせて、俺がこなければ確実に殴られてた。それでも、厳重注意しかできないんですか?」

伊月が必死に訴えてくれたけれど、どれも程度が小さすぎるため強制連行は難しくパトロールを強化するのが精いっぱいだという。私のほうも証拠はなにもないし、仕方ない。

実際、事実を並べてみれば、頭にくる態度をとられて押さえつけられて、足払いしたら殴られそうになったというだけだ。

落ち着いて考えれば、それだけのことで警察が相手をしてくれただけでも運がいいのかもしれない。

警察が出てきた以上、男だって今後、強引な真似は控えるはずだ。日照権が原因だろうって話もしたし、警察が把握しているってだけで男にとってはいい抑制剤になったと思うしよかった。

警察も男もいなくなったあと、家が急に静かになりどっと疲れが出る。
あんなことがあっただけでこの疲労感とか情けないな……と思いながら、髪がまだ濡れたままだったことを思い出した。

もう四割方乾いているけれど、一応ドライヤーをかけた方がいいだろうと、洗面所に向かい歩き出すと、「おい」と腕を掴まれた。

さっきまで男に押さえつけられていた手首を掴まれ、体がビクッと大げさなほどに跳ねてしまう。