「伊月さんのこと、大地くんは知ってるの?」
「うん。私よりも前から知ってる……っていうか、三ヶ月くらい前からうちに寄りついてご飯とか食べてたみたい。私よりも、おばあちゃんと大地の方が伊月と仲いいし」

以前、バーで伊月とマスターから聞いた話だと、そんな感じだったはずだ。
三ヶ月くらい前におばあちゃんが転んだのを助けてくれて、うちと伊月との関係はそこからだって。

あのバーで飲んだお酒はおいしかったな、と思い出していると佳乃が聞く。

「で、大地くんは伊月さんのことなんて言ってるの?」
「別に……いいひとだって言ってたけど」

『ばあちゃんを大事にしてくれるから悪いヤツじゃないのは確かだな。仕事の合間ぬってちょこちょこ様子見に来てくれるから助かってる』
『伊月さん、いいと思うけど』

大地とそんな会話をしたのは、つい先日だ。

でも、どうして大地の伊月への評価を知りたがるんだろう。
私と同じように、おばあちゃんの傍にいさせても問題ないかを心配してくれてのことかな……と考えていると、心の声が聞こえたみたいなタイミングで佳乃が言う。

「いや、だってつぐみの男を見る目って壊滅的じゃない。つぐみって自分では堅いつもりなんだろうけど、ちょっと優しくされるとコロッといっちゃうし。だから、つぐみが〝優しい〟なんて言ってももう私も本気にとらないけど、大地くんが言うなら間違いないかなって」