「お前、休みだって言ってたよな」

「し、しー…?」

「良いから答えろ。休みだって言ってたよな」

 琢磨が強く言い放つ。

「あ、ぁ…」

「汐里の誘い、受けてたよな」

「あぁ…」

「嘘でも休みなら、お前はどうしてあそこにいたんだ? 何だってお前は、美希と一緒に居た? いつからだ? お前たちは恋人なのか? ただのそういう関係なのか?」

「……そ、れは」

 茶臼山はバツが悪そうに言葉を詰まらせる。
 降り注ぐ言葉の雨に、琢磨の怒りに、まるで怯えているようでもある。
 けれども、そんな反応は、返って琢磨を安心させた。

 露とも表情を変えなかったり、変える筈の内心でもポーカーフェイスを徹底したり、そんな態度を取られたならば。
 自分がどうなっていたか、分からない。

 それでもやはり、少しずつ苛々と募る気持ちの中、時間を置いて、やっと一つずつ答えていく茶臼山。

 どうしてあそこにいたのか。
 体調が悪かったのは本当。しかし、善くなって、仕事の為にと向かっていたから。

 どうして美希と一緒にいたのか。
 美希から「少しの時間だけ」と呼び出されたから。

 いつからか。
 半年前。

 恋人なのか。

 返答はイエス。

 琢磨は思わず言葉を失った。
 返せなかったのではなく、返す言葉のたった一つすらも、見つからなかったから。

「しーの気持ちには気付いていた。けど、告白をされたことはなかったから、断りもしていなかった。だから、予てよりずっと好きだって言ってくれていた美希と付き合ってる」

 声はやや震えながらも。
 そこには謝罪の念も込められているが、まるでただ身の上話を聞かせるような語り口調。

「あの日の呼び出し、一緒に居たいって言って来たのは美希だ。が、手を出したのはこっちの方――高校最後の文化祭だって、気持ちが昂ってたのかな、どうにも抑えが効かなくなって…」

「……なこと」

「自分だって一人の男なんだ。あぁ、男なんだよ。理想の生徒会長なんて知らない。性行為にも興味はあった。場所も時間もタイミングも、確かにアレだったと反省もするけど、雰囲気と気持ちに正直になることだってある」

「……んなこと」

 へらへらと。

「しーには悪かったと思うけど、あの日強く呼び出してくれたのは――」

 そんな言葉が欲しかったんじゃない。

「僕は――」

 琢磨は――


「んなこと聞いてんじゃねえんだよ…!」