「それに?」
「お、お母さんが来てくれたから」
かわりに口をついて出てきたのはそんな嘘。
言ったあとで、なんでお母さんの名前が出たんだろうってびっくりした。
自分でもよくわからなくて首をかしげる。
そんな私にすうちゃんは「そっか」とほっとしたような、嬉しそうな顔をした。
その笑顔に、嘘をついた罪悪感が毒のようにじわじわと胸に広がっていく。
「やっぱお母さんも何だかんだ娘のことが心配なんだね!」
そうだねと返すことはできなかった。
たとえ私が風邪をひいたと知っても、お母さんは気にもかけないだろう。
私は昔から身体が弱かった。
弟がみかんのゼリーを持ってきてくれたことはあったけど、お母さんやお父さんは一度も私の様子を見に来てくれたことはなくて。
小さい頃はなんで来てくれないのって泣いて、それで余計に熱が上がったりしたっけ。



