「でも本当によかったんですか?せっかくなんだから、もうすこし話していけばよかったのに」
「ちゃんと生きてるかの確認がしたかっただけ」
「花平くんらしいですね」
くわしい過去はわからないけど、それでも花平くんを育ててくれたのは花平くんのお父さんで。
どんな言葉を投げかけられても、憎まれててもたぶん、花平くんはお父さんのことを憎んでないんだろう。
「やっぱりあなたは優しいです」
誰よりも優しくて、誰よりも親孝行な花平くん。
そんな花平くんの策略に、私がはまるわけがなかった。
『お前が堕ちたって、どうだってよかったからだよ』
あの日、花平くんがついてきた理由。
もしかしたら最初はその通りだったのかもしれないけど、離れようとしたってことはそう思わなくなったってことじゃないの。
私に堕ちてほしくなかったから、どうだってよくなくなったから。
花平くんは離れようとしたんじゃないんですか。
まあ、エゴイスティックだと言われればそれで終わりだし……恥ずかしい。
自分でこんなこと思うの、死ぬほど恥ずかしい!
恥ずかしさのあまり自惚れであってほしいという気持ちと裏腹に、自惚れなんかじゃないって本人に言ってほしかった。
とにかく、あの言葉は私にとって逆効果でしかない。
……というかもうがっつり落ちてるし。



