不器用オオカミとひみつの同居生活。





夕焼けでハチミツ色に染まった空をながめながら。

病院からの道のりをゆっくりと、
時間をかけて歩く。



「花平くんのお父さん、最後、笑ってましたね」

「コントか何かかと思ったんじゃね」

「いや、さすがにそれは……あるかも」


花平くんが私のおでこ、ぺちぺち叩くから。


でも、やっぱり違うと思うな。

だって花平くんのこと、愛おしそうに見つめてたもん。


私はその姿をみて安心した。


あのときの言葉はもうどこにもない、って。


眉間にあったシワや厳しいまなざしと一緒に、雨に流されていったようだった。




「……ありがとな」

「え?胃薬のことですか?」

「ちげーよ」


花平くんの言わんとしてることはわかってるけど、恥ずかしいからあえて受け流させてもらう。



そういえばあのときも夕方だったな。


実家に行った帰り道で、行きよりも軽くなった私の心。

今、花平くんも同じ気持ちであればいいなとひそかに願った。