不器用オオカミとひみつの同居生活。




今日は顔を見に来ただけだというので、ロビーまで二人を送り届ける。



「気をつけて帰りなさい」


俺の言葉に、前を歩いていた綾人が振り返った。



「ま、たまにメシぐらいなら作りに行ってやるよ」

「あの、胃薬を用意しておいたほうがいいですよ」


すぐさま憂さんが(ささや)けば、綾人はその額をかるく叩く。



「余計なこと言うな」

「あーっ大切にするって言ったばかりなのに!」

「うるさ」

「また叩いた!昨日のしおらしい花平くんはどこへ?」


目の前で言い合っている二人を見て、ふっと笑みがこぼれた。


たしかに俺が言うまでもなく、だったな。



病院を後にする二人の姿を見送りながら、ふと思いだした。


そういえば、最後に見た母親の髪色も金だった。

最初、綾人が髪を染めてきたときは同じように重ねていたが……





「なんだ、ずっと綺麗じゃないか」


光に反射する金の束は、きらきらと優しく揺らめいていた。