不器用オオカミとひみつの同居生活。



愛する人が命をかけて繋いだ希望を、ぶち壊し、綾人を否定し続けた俺は。


本当に、なにも、見ようとしていなかった。





ごめんな。



ごめんな、こんな父親で。


ごめん、

ごめん。



美里、





……綾人。







「──────っすまな、かった……!」


久しぶりの雨は、
乾ききっていた地に流れをつくるようだった。


出し方すら忘れていたから、ひどく不格好になっていただろう。



あの日からずっと俺の中に眠っていた雨。

喉の奥が詰まったように、声を上げることもできない。




「いーよ、別に。あんたがいくら俺を憎んでいようが望んでなかろうが、ここまで育ててくれたことには変わりねーし」



許されようとは思わなかった。


そんな言葉ももらう資格はなかったはずなのに、

喉のつっかかりが剥がれたように、(せき)を切る。






「……あんたもひとりだったんだな、親父」




病院の一隅、伸びたカップラーメンの上に。

……雨は、どこまでも静かに降り注いでいた。