不器用オオカミとひみつの同居生活。



「……老けたな」


そう言われ、自分もなにか言い返そうと思ったが。

じっと観察するように実の息子を見上げても、なにも言葉にできなかった。


身長が少し伸びたか、

いや、端正な顔つきになったか。


自分の中にあるのは、ずっと前の息子の姿。


それこそ小学生の頃までの記憶だった。

そこから先は失われてしまっている。




……いや、俺は見てすらなかったのだ。



成長していく息子から目を背け続けていたから、どこが変わったかなんてわかるはずもなかった。


代わりに口から出てこようとしたのは、




「っ、」

空気の抜けたような音だった。



『今ごろ何をしにきたんだ。この親不孝が』


もう少しで口をついて出そうになったその言葉。


きつく言ってしまっていることは自分でも気付いていた。

おそらく、そのせいで綾人が出ていってしまったということにも。



けど俺は知らない。

このやり方しか、俺は知らないんだ。



その瞳から逃げるように、横に視線をずらす。


柔らかそうな黒髪に、色白で華奢の、愛らしい雰囲気を持つ少女。



目が合えば、ひかえめに、それでいてどこか申し訳なさそうに笑みを見せてくれた。