不器用オオカミとひみつの同居生活。




たどり着いた先はいつもの場所で。

誰の目を気にすることもなく、カップラーメンをもそもそと食べていたときだった。




「────あの」


鈴のような声。

頭上から聞こえたそれは、






「……美里?」

「あの、さぁ。徹さんったら、カップ麺ばっかじゃ身体に悪いっていつも言ってるでしょ。早死にしたいわけ」



気を抜いていたから、きょとんとしてしまう。


なんで美里がここにいるんだ?




……ああそうか、忘れていた。



「君はあのとき、土壇場で持ち直したんだったな」


「そうよ、私のタフさは天下一品なんだから!勝手に殺さないでよね」

「はは、悪かった」

「あ、久しぶりに笑った。あなた、ただでさえ強面なんだから、もっと笑ったほうがいいよ」


いつもならここで頬の一つや二つ、引っ張られるのに、目の前の美里が触れてくることはなかった。



美里?

どうしたんだ。



こちらから手を伸ばしても、いっこうに捕まらない。

一歩も動いてない美里に、どうしてか触れられる気配がなかった。