「いやー、あのときの空気といったら。家の中が極寒の雪山になったのかと思ったもん」

「大げさな」

「本当よ。最初はおたがい全然譲らなくてさぁ。次第にヒートアップして、もう収拾がつかなくなっちゃってるわけ」



だから徹さんが折れたときはびっくりしちゃった、と美里は言った。


……たしかに、俺にだってプライドはあった。

しかしそんなつまらない意地やプライドを捨ててでも、この目の前の女性と一緒になりたかったのは事実である。



「それでも統合するってなったとき、うちを残してくれたことには驚いた」


たとえ裏の実権は花平側にあるとしても、表面上は五十渡の経営ということになるから、何か裏があるのではないかと変に疑ってしまう。



「それはあれよ、お父さんなりのお心遣い」

「は、今さらか?」

「二人って最高にウマが合わないよね。同族嫌悪?よかった、結婚できて」


抱きついてきた美里はぎゅっぎゅっとやけに密着してくる。