「それで」

「ん?」

「さっき、なんで笑ったんだ?」


ベッドの中、ふと気になって問いただせば一瞬なんのことかわからなかったのか首をかしげ、すぐに「ああ」と声を上げる。



「だってあの頑固な徹さんが婿入りしてくれたから、嬉しくて」

「……でないと結婚させてくれなかったからだろう。俺だって別に、」


婿入りがしたかったわけじゃない。


さすがに気が引けたので口には出さなかったが、言いたいことは伝わったのか眉を下げて笑った。



「うちのお父さんも頑固だからなぁ」


美里の父は関連病院の院長だった。


長女である美里に対して俺は次男であり、跡取りの心配はなかった。

しかし兄はあまりいい出来とはいえずまだ半可だった俺が病院を継いでいたから、不満を抱いている者も少なからずいるのだろう。


それゆえあの発言につながったのか、“半可”な俺にはわからないが。




『お義父さん、美里さんを私にください』


『美里はやらん。お前がうちに来い』


『……は?』