美里は美しい瞳の持ち主だった。


だからといって共に生きることを決めたわけではない。


それ以上に。

瞳以上に美しい心を持っていた美里に、惹かれないわけがなかった。


立派な大人なのに、その笑顔は子供にも劣らない無邪気さで。


今もこうして、美里は隣で笑っているのだった。



さきほどまでなにかを書いていたかと思えば、うひゃあとたまげたような声を出す。



「ねえ、見てこれ。あらためて書き出したらとんでもなく複雑だった」

「なんでドイツ語なんだ」

「わはは、いつもの癖でつい」


絶対わざとだ。

渡されたメモには特有の走り書きが並んでおり、なぜかそのすべてがドイツ語だった。


もちろん自分も日頃から使っているので、なんなく解読することができたのだが……

その内容に思わず眉をしかめる。