昔を思い出すように目を細める姿を、ただ見つめることしかできなくて。

いま刈谷先生が何を考えているかなんて皆目見当もつかなかった。


そして……




「どこかで見たことのある顔だと思ったんだ。
美里(みさと)さんと似ている、その顔を」



“美里”


私には何のことか分からなかったけど、その言葉に花平くんの足が止まって。


その背中に語りかけるように刈谷先生はこう言った。









「……やっぱり君は、

──────院長のご子息だったんだね」



いつの間に降り出したのか、窓の外から雨の落ちる音がした。

その音がまるで耳鳴りのように絶え間なく頭の奥で響く。


ゆっくりと振り返った花平くんの瞳はなにも映し出していなくて……



その宝石眼のなかには、どこまでも深い闇が続いていた。