教室を出た私は、今すぐにでも走り出したい気持ちを抑えて廊下を早歩き。
やはり衣装が目を引くのか途中何度か声をかけられたけど、そのたびに対応していたら全然進まなくて。
今さら着替えようにも、教室に引き返すまでのほうが大変だと思った。
さらにもう一度かけてみた電話は、今度は何コール待ってもつながらない。
「あ、白雪姫の子じゃん!」
強行突破だ、と突き進もうとしたとき私の腕をつかんだのは、どこかで見覚えのある男子だった。
……あ、『劇終わったら告ろ』の人だ!
劇のときに最前列でそんなことを言っていた男子生徒。
その人が今、私の腕をつかんでいる。
周りにいた友人らしき人たちも不思議そうに首をかしげていた。
「なん、その子知り合い?」
「いや違うけど、顔見知りだよな?」
いや違います。
たしかに顔は覚えていたけど、顔見知りとはまた別の話だ。



