「たしかにちょっと無愛想ではあったけどさ。途中までは髪も黒かったし、不良でも何でもない普通のやつだった」


途中までは。

その言い方じゃあ、ある日いきなり変わったというように聞こえる。


髪が金色になったのも不良になったのも、突然だったの?




「あいつは────……いや、俺の口から言うようなことじゃねーや」


そして、周くんは私の背中をぽんと押し出してくれた。



「花平が誰かと親しくしてるとこ、久しぶりに見た。それが俺の好きな人ってのはちょっと悔しいけど……なあ茅森ちゃん。あいつのこと、よろしく頼むよ」


「……うんっ!ありがとう、周くん」



立ち去るとき、私は振り返らなかった。

振り返ることが周くんを傷付けることになるとわかっていたから。


周くんの太陽のような笑顔を思い浮かべて……

もう一度、心の中でありがとうと呟いた。








「加瀬沢」

「……蘆田?うわ、なにそのマントと王冠。趣味悪いな」

「すうの趣味じゃないっつーの。文句はミスコンに言ってよね」


「ああ、なるほどな」

「おめでとうとか、何かないわけ?」


「俺いまフラれたばっかで傷心してんだけど。……おめでとう」

「ありがとう。アンサングヒーローの周くん。すう、あんたのこと嫌いじゃないよ」


「蘆田が辛辣じゃない……?明日は雪かな」

「やっぱ嫌い」



だから私が去ったあとの教室で、こんな会話が繰り広げられていたことは知るよしもなかった。