不器用オオカミとひみつの同居生活。



「ごめん、いま思えばなんか生意気なことを」

「まさか」


そんなことないって周くんは言ってくれたけど……


かなり上から目線で物を言っていたな、1年前の私は。

人気者の周くんの名前が忘れられるわけないのに。


あのあと“遍く”と“周く”が同じ意味だということを知ったんだっけ。

やっぱりいい名前だなぁ、って思っていたら周くんに名前を呼ばれた。



そして、



「一目惚れだったんだ」


今まで隠していたのか、それとも私が気が付かなかっただけなのか。

慈愛の込められた眼差しから目が離せなくなる。



「あのときの笑顔がずっと頭んなか残ってて、気がついたら茅森ちゃんのことばっか考えてた」


いつも天を仰ぐように笑っていた周くん。

そんな周くんが好きになってくれたのは……



「そうやって言ってくれたことも。二年でまた隣の席になって、嬉しそうにしてくれたときも。……実を言うと、温泉で鉢合ったときも、」

「それは忘れてほしい……」


思いだして、ふたりして赤くなる。

絶対に墓場まで持っていくつもりだった。



「……今回、一緒に劇をできたことも。全部、嬉しかった」


そっと頬に触れられて、思わず周くんを見上げる。

まるで割れ物を扱うかのような指先も、その視線も、熱かった。