不器用オオカミとひみつの同居生活。



『茅森いまどこにいんの』

「私?学校ですよ」

『の、どこ』

「4組の教室です。……あ、切られた」


一方的に切られたスマホの電子音が耳に届く。


もっと話してたかったけど、彼も彼で忙しいのかもしれない。

……たぶん。



ふたたび文化祭の景色を眺めようと中庭に目を向けた次の瞬間。


後ろから、誰かが教室に入ってくる音がした。



ゆっくりと振り返る。

そこにいたのは




「……周くん」


同じく衣装のままの、周くんだった。


会うのはカーテンコールぶりだったけど、みんなに見せていた笑顔はどこにもなくて。

何かを決心したような、そんな顔。



ここで気付かないほど私もバカで鈍感ではない。


劇のとき、すでに周くんの気持ちには気付いていた。

……ううん。昨日には気付いていたんだ。



『周くんの好きな物ってなに?』


その答えにも。

そして、いま、周くんが何を言おうとしているのかも。