しばらく行きゆく人々を眺めていたけど、ふとスマホを操作して耳に当てた。
ワンコール、ツーコール、スリーコール……
出ないかと思ったけど、予想に反してつながった。
「あ、もしもし。花平くん?」
『……なに』
「いや、なにしてるのかなーって思って」
電話越しだからよけいに低く感じる花平くんの声。
寝起きっぽくはないけど、今どこにいるんだろう。
「学校、盛り上がってますよ」
言ったと同時、ちょうど教室の真下の広場で「花平くーん!花平綾人くーーん!いらっしゃいますかー!!」と声を張っている生徒がいた。
おそらくあの人も実行委員。
言わずもがな、ミスターコンのだろう。
かざしていたスマホをふたたび耳に当てる。
「ね、聞こえました?花平くん呼ばれてますよ」
『誰?今の』
「たぶんミスターコンの実行委員。最終候補まで残ったんですね」
『エントリーしてねぇけど』
すうちゃんと全く同じ事を言う。
おかしくて、ついくすりと笑ってしまった。



