周くん……?
このままじゃ、見ている人も異変に気付いてしまう。
これも演出だと思っているのかまだ動揺の声は聞こえなかったけど、それも時間の問題だった。
観客席から見えないことをいいことに、私は棺の中で目を開けた。
周くん、どうしたの?
愛してる、だよ。
口の動きだけで伝えるけど、周くんは口を結んだまま。
……あ、
私を見つめる周くんの目には、見覚えがあった。
『奪うから』
忘れていた言葉が、真剣な眼差しが。
頭の中で鮮明に再生される。
……もしかして、周くん。
どっと胸の鼓動が速まり、周くんから目が離せなくなった。
そして────
『愛してる』
観客席が、今日一番の盛り上がりを見せた。
王子さまのキスで白雪姫は目を覚ましました。
そうして想いが通じあった2人は結婚し、
いつまでもいつまでも……
──────幸せに暮らしましたと、さ。



