そういえば、とすうちゃんが切りだした。


「不良と言えば、うちにもいるよね。すごいやつ」

「へー何科?」

「普通科。わりと有名だよ。花平 綾人(はなひら あやと)っていうんだけど」


「花平綾人。なんというか……華やかで可愛い名前だね」

「それ今この場に本人いたら殺されてたよ」


その人はあまり学校に来ないから、すうちゃんも実物を見たことはないらしい。


けれど噂はたくさん知っているようで、そのほんの一部を教えてくれた。


族のトップをやっているとか。

喧嘩を売ってきた不良グループを1人で相手して、さらにはひとり残らず病院送りにしたとか。


何人もの大人の女性と……その、
関係を持ってるとか。


聞くかぎり、どれもこれも良い噂じゃなかった。


「写真持ってるんだけど見る?見た目チャラいけど、すう的には結構イケメンだよ。

花平と同じクラスの人が送ってくれたの」


「見る見る」

すうちゃんが誰かをイケメンだなんて言いきるのはめずらしかった。


一体どんな人なんだろうと思った瞬間、チャイムが鳴った。


すぐに担任の先生が教室に入ってきたから、結局私は写真を見ることをなく席に着いたのだった。