「あまり話したことなかったけど、すごく優しくしてもらった」
ちょっと派手めな相田さんとは今までまともに会話したことなくて。
今回でぐっと距離が近づいた……とまではいかないけど、以前にくらべて気兼ねなく話せるようになった。
「ドレス、似合ってる」
「ありがとう。周くんもかっこいいよ」
笑いあった私たち。
私も周くんも、昨日の出来事に触れることはなかった。
最初はあえて考えないようにしていた私も、出番が近づいてくればそのことすら次第に忘れていって。
そのうち軽音部の最後の演奏も終わり、進行役のアナウンスが入った。
『続きましては、2年4組によるミュージカル『白雪姫』です』
……いよいよはじまる。
最後にもう一度舞台そでを見渡したけど、やっぱり花平くんはいなかった。



