「次だな。今のうちに“人”飲んどこ」
「あはは、私も」
舞台そでにて、周くんと一緒に手のひらに書いた“人”をぱくりと飲み込む。
ステージの上では軽音部によるライブ演奏が行われていた。
アンプから流れる爆音が鼓膜を揺らし、汗を流しながら手を振り上げるボーカル。
青春だ。
ギターが上手い人ってみんな指長いのかな、なんて考えていたら「あれ?」と隣で周くんが声を上げた。
「ここ、ほくろって前からあったっけ?」
周くんの視線が右目の横に注がれる。
私は見やすいように左を向いて、指でちょんちょんと示した。
「泣きぼくろ。書いたほうがいいって相田さんに」
相田さんとはメイク係とはまた別の、クラスのファッションリーダー。
アイライナーでぴっと付け足してもらったのだ。
「へー、いい仕事したな相田」



