不器用オオカミとひみつの同居生活。



まだ時間があるから、台詞を確認しつつすうちゃんと一緒に座っていた。


とんがり帽子に赤い衣装のすうちゃんはすでにやるべき事はないのか、ひたすら私の髪をいじっている。



「いやーこれなら加瀬沢も落ちるわ!いやもう落ち……あ、ごめん」


はっと口を押さえるすうちゃんにううん、と笑いかけた。

やっぱりすうちゃん的にはそっちのほうがいいらしく、なるべく言わないようにしても気を抜けば出てしまうらしい。


きょろきょろと教室を確認しても、花平くんの姿はなかった。

というか学校にすら来ていないかもしれない。


それでも文化祭の準備にはそれなりに参加していたようで、クラスメイト(おもに大道具の人たち)と話しているところを見かけたこともあった。


家にはいなかったから来てると思ったんだけどな……



「じゃあみんな、円陣組もうー!」

委員長の言葉に、みんなが教室の真ん中に集まっていく。



「すうたちも行こっ」

「……うん!」


にこっと手を差し出してくれたすうちゃんと一緒に、私も集合したのだった。