今日も送ってもらうのはさすがに悪いな。
というのも、今まで「夜道を1人で歩くのは危ないから」って家の近くまで送り届けてもらっていた。
すごく優しくしてくれたから、今度何かお礼でもしたいんだけど……
「周くんの好きな物ってなに?」
料理だったら、レシピを見ればある程度のものは作れる。
あ、でもお菓子系は昔っから作れないんだよね……というか作れるけど、はっきり言って不味い。
前回のバレンタインに作ったエクレア、あれ結局どうしたんだっけ。
私は二口食べてリタイアしたけど、花平くんに出したエクレアの末路を思い出せなかった。
「茅森ちゃん」
「ん?どうしたの?」
そういえばさっきから口数が少なかった周くんに呼ばれ、考えるのをやめて振り返る。
言葉の続きを待っていても、そういうわけじゃないみたいで。
なんだか少し様子がおかしくて首をかしげる。
「周くん?」
「……いや、なんでもねーや。帰ろっか。送るよ」
申し訳ないからって断っても、周くんは譲ってくれなくて。
けっきょく今日もお言葉に甘えることにした。



