深呼吸をして、呼び鈴を押し込んだ。 1秒、2秒、3秒。 『はい』 少し間があって聞こえてきたのはお母さんの声。 声を聞くのは中学卒業ぶりのはずなのに、ちっとも懐かしく感じない。 理由なんて考えなくても明白だった。 「……私。憂、です」 言った瞬間、ぷつんとインターホンが切れた。 これは…もしかしなくても、門前払い? そのときだった。 ギイィ、とまるで壊れたバイオリンのような音が近くでして、家につながる門が開いたのは。