こんな日が続いてほしくて、

でも願えば願うほど不穏が訪れる。



これを一難去ってまた一難と呼んでもいいのかわからなかったけど。




「あれ、奇遇だね。ここら辺に住んでるの?」


学校の帰り、あともう少しで家だった。


目の前に現れた人物も、ここで私に会うのは想定外だったのか、驚いたように目を細めていた。



「ひ、なた」


何年ぶりだろう。その名前を口にするのは。

廃れることのなかった思い出が一瞬で脳内に広がる。


治ったばかりの頭が、締め付けられるようだった。



隣にいた花平くんが半歩前に出た。


「茅森、こいつ誰」


そうか、花平くんは知らないんだっけ。


深呼吸をした。

浅く、浅く、気持ちを落ち着けるように。




「……茅森 陽向(ひなた)。私の弟です」


花平くんの向こう側で、唇の両端をつり上げて


「久しぶり。






────ユーウツ姉ちゃん」



陽向は嬉しそうにわらった。