ぱんっ、とさっきとは反対の頬をたたかれた。
衝撃でふらついて、そのとき制服のポケットに手が当たった。
おもむろに手をポケットに突っ込んで、入っていたものを取り出す。
「……これ」
差し出したのは、こっちゃんのキーホルダー。
ハチミツ色のクマは昨日洗ったから、本来の柔らかな色を取り戻していた。
「……そんなもの、もういらない」
「じゃあ、私のをもらってくれる?」
カバンにつけていたクリーム色のクマをはずそうとしたけど。
二重リングをはずすのに手間がかかって、何度も失敗してしまう。
「あれ?……痛っ、」
「……なにしてんの。ここは、こう」
爪が剥がれそうになって、見かねたこっちゃんが私に近づいて。
一発でキーホルダーをはずしてみせた。
こっちゃんの手の中にクマが収まっているのを見て、視界がにじんだ。



