その言葉を聞いた瞬間、こっちゃんが走り出したから。
「っ待って!」
いま私が追いかけても逆効果だ。
何を言っても聞いてもらえないかもしれない。
もしかしたらまた怒らせたり、傷つけたりするかもしれない。
だから私がこっちゃんを追いかけたのは、もしかしたら間違いだったのかもしれない。
でももう一生こっちゃんに会えないような気がした。
ここで話さなきゃ、後悔すると思ったから。
人生なんて間違えてばかりで、たぶん私は間違いのほうが多かった。
……でも、後悔するほうがもっと嫌。
運動部に所属しているこっちゃんは足も速くて体力もある。
私とこっちゃんの距離は離されていく一方で、すでにわたしは体力の限界だった。
「こっちゃん!」
最後の力を振り絞ってだした声。
無視されるかと思ったけど、こっちゃんの走る速度が緩まった。



