頬を叩いたその手で、花平くんの手首をつかんだ。
なんの感情もうかがえない瞳から決して目を離さなかった。
つかんだ手は振り払われなくて。
いつだって私の心は見透かされてるけど、
それが伝わってほしくないことだってあるけど。
いまだけは私の気持ちが伝わるように、手に力を込める。
恩を仇で返す。忘恩の徒。
そんなことわざが頭のなかをぐるぐる回っていた。
花平くんはたすけてくれた。私のことを。
「謝って、ください」
嫌われるかもしれない。
こんなヤツ助けなきゃよかったって思われるかもしれない。
だけど。
花平くんは視線を、私からこっちゃんにうつした。
「……言い過ぎた。悪かったな」



