不器用オオカミとひみつの同居生活。



「泣いてるよ、お前」


言われて初めて、頬がぬれていることに気付いた。


いつから?

ぜんぜん気が付かなくて、いまになって指でぬぐう。


だけど止まらない。





『嫌い、あんたなんて大っ嫌い!いなくなればいいっ!!』


……止まることを知らない。



「こほっ、ごほっ……!」


そのうえ咳まで止まらなくなったから、もう大変だった。


息苦しくて、つらい。


このまま死んでしまいそうって思ったとき、

こっちゃんの『死んでもよかったのに』って言葉を思いだして余計に呼吸が乱れる。


パニック寸前だった私の背中に大きな手が触れた。



「大丈夫、落ち着け」


背中を叩いてくれる。

その手が優しくて、なぜか暖かく感じて。


もうろうとする意識の中、

最後に感じたのは安心と……



得体の知れない、懐かしさだった。