「私……、っ!」
「もう何も聞きたくない!」
私の手の中にあったスマホは、いつの間にかこっちゃんが握りしめていて。
振り上げたそれが私の顔に飛んできたと思ったときには、すでに何が起きたか分からなかった。
いままでに感じたことのない痛みに
顔を押えて思わずうつむく。
指のすき間から見えた床には、
ぽたぽたと赤い何かが落ちていた。
痛みに耐えてなんとか顔を上げると、
すぐ目の前にこっちゃんが立っていた。
その血のように赤い目は、夕日のせいじゃなかった。
「嫌い、あんたなんて大っ嫌い!いなくなればいいっ!!」
「っ……!」
ドンッ……
身体に衝撃がはしった。
後ろ向きに倒れながら、うす暗い部屋に吸い込まれていく。
こっちゃんがカバンにつけていたハチミツ色のクマをちぎって捨てた。
「もういらない。これも、あんたも」
「こっちゃん……!」
閉じられた扉は、最後まで私の声を届けてくれることはなかった。



