「あたし、今回のオリエンテーションで花平くんの心を物にするんだ。
いままでは見てるだけだったけど、このままじゃ名前すら覚えてもらえないから」
「こっちゃん……」
意気込むこっちゃんの目は燃えていて、今すぐにでも花平くんと話したそうにしていた。
花平くんの隣が空いていたからさっそく立ち上がろうとしたこっちゃんの腕を……
私はぱしりと掴んでしまった。
「カヤちゃん?」
「え……あ、その」
こっちゃんは私の突然の行動に目を丸くしていたけど、それ以上に驚いていたのは私自身で。
なんでとっさに引き留めちゃったんだろう。
「な、なんでもない────わっ、」
「きゃっ!」
手を離そうとした瞬間、道が悪いのかバスが大きく揺れた。
バランスを崩して前の背もたれに顔面から突っ込みそうになったこっちゃんを、あわてて支える。
「……いまは危ないから、我慢しよう?」
「そうだね……」
顔が少し青ざめているこっちゃんは大人しく席に座る。
そして私たちを乗せたバスは目的地に到着した。



