不器用オオカミとひみつの同居生活。




まさかすうちゃんが食あたりを起こすなんて思ってもいなかった。


最後の最後まで電話で『行きたい』ってごねていたすうちゃんは、結局時間になっても集合場所には現れなかった。



「すみれ、残念だったね」

「……うん」


いまは揺れるバスの中。

隣の県にある温泉街へと向かっている途中。


隣に座っていたこっちゃんが気遣うようにお菓子を差し出してくれて。



……そうだよ。

すうちゃんは残念だけど、いつまでも落ち込んでちゃダメだよね。


一緒に行きたかったけど仕方がない。



「すうちゃんの分も楽しもう、こっちゃん!」

「うんっ!」


またすうちゃんが回復したら、そのときは3人であらためて温泉に行こう。



カバンには昨日おそろいで買ったテディベアが揺れていた。


すうちゃんがスミレ色、私がクリーム色。

そしてこっちゃんは




……ハチミツ色だった。


その色が何を表しているのか私はすぐにわかった。


ハチミツ色のテディを両手でそっと包み込むこっちゃんの顔はとっても可愛くて。


恋する乙女はこんなにも可愛いんだって思った。