「いったいどれほど喧嘩してきたんですか……?いくら花平くんでも身体が持ちませんよ」


身体に触れる。

服の上からでもわかるほど、花平くんの身体は冷え切っていて。


こんなに冷えるまでどこで何をしていたのだろう。


とりあえず、自分の着ていたコートを花平くんにかけた。


丈がぜんぜん合ってなくて思わず笑いそうになったけど、不謹慎すぎてそんな感情もさっと引っ込んだ。


というか笑えない。

この状況が全然笑えない。



花平くんの意識もはっきりしてないし、
これは救急車を呼んだほうがいいのかな。



「待っててください。いま救急車を呼びますからね」


えっと、スマホ……はコートの中だ。


「失礼します。……あれ、逆か」


花平くんに近づいてコートのポケットを探る。

手にスマホが触れたときだった。





「……茅森」


「なん──────」


“なんですか”


その言葉を続けることはできなかった。