「私ね、お母さんからそれ聞いた時からずっと今井さんと喋りたいと思ってたんだ」

「………」

「実は家が定食屋で油臭いって昔からからかわれることが多かったの。でも今井さんはいい匂いだって言ってくれた。だからそんな今井さんと友達になれたらいいなって思ってる」

冨山さんがとてもいい子だということはわかっている。でもやっぱり都合が悪くなれば離れていくんじゃないかとも思う。


「……私、怖いんだよね。友達作るの」

誤魔化すことなく、素直に打ち明けた。冨山さんは深く訊ねてこなかった。

その代わり、私の臆病さを吹き飛ばすような明るく声が飛んでくる。


「じゃあ、お試し期間にしよう!」

「……友達にお試しなんてあるの?」

「私が勝手に作った。お試しの間に私のことを知ってもらって、それでいいなって思ったら本当の友達になって?」

「なんかそれって、恋人同士がやるみたいな感じだね」

「はは、たしかに!」

冨山さんの笑い声が部屋に響く。

女の子とこうして長く喋るのはいつ以来だろうか。べつにひとりでいいし、楽しくしている同級生たちを見ても羨ましくないって思っていたけれど……。

冨山さんがお試しでも私と友達になりたいって言ってくれて、ちょっと泣きそうだった。