朝が弱い俺と違って、母さんはいつも朝からテキパキと動いている。
手の込んだ朝ご飯を作って、家中のありとあらゆる場所に掃除機をかけて、みんなの靴まで磨く。掃除や家事をするのが楽しいそうで、気まぐれに手を出すと逆に怒られる。
そんな中で、唯一の俺の役割は郵便物の確認をすること。
母さんは学校からの疚しい手紙を隠したいだけじゃないのと怪しんでいるけれど、そんなことのためにわざわざ早起きはしない。
「晃」
自分の部屋のドアを開けようとすると、声をかけられた。振り向くとスーツを着た父親が立っていた。
「また喧嘩をしたのか?」
目敏く口元の傷を見られて、俺は顔を背ける。
「もう小さな子供じゃないんだから、自分の行動に責任を持ちなさい」
「………」
どの口が言ってんだよと反抗的な言葉が喉元まで上がってきていたけれど、言い返したりはしなかった。



